「冒険者に捧ぐ100の言葉」の更新と、気ままに描いたラクガキの掲載。
2007.09.01 Sat
2人の頭上で轟いていた雷は、
時間と共に東の方角へと遠のいていった。
しかし、地面を叩きつける雨は一向にやむ気配がない。
さてどうしたものかと、キトが軒下から空を見上げていると、
足許で何かが動く気配がした。
見やると、先ほどまでうずくまって頭を抱えていた少年が
ゆっくりと立ち上がったところだった。
「もう大丈夫なのか?」
キトが尋ねると、少年は一瞬だけキトの目を見てから、
ばつの悪そうな顔をして視線を逸らした。そして、小さく頷く。
「さっきは、その……悪かったよ。
俺、ここの見張りを任されててさ。ちょっと気を張りすぎてたかも」
そっぽを向いて頭を掻く姿を見ていると、
先ほどまで荒々しい攻撃を仕掛けていた少年と同一人物だとは、にわかには信じがたい。
あの剥き出しの殺気をして、
“気を張りすぎている”ではすまないだろうとキトは思ったが、口にしなかった。
「見張りってことは、お前、“黒蠍”の一員か。
“黒蠍”って、子どもでも入れるんだな」
感心してキトが呟くと、少年は不意に眉間に皺を寄せた。
「俺は子どもじゃない」
「え、じゃあお前、歳はいくつだよ」
キトの質問に、少年は一瞬、ぐっと言葉に詰まる。
しかしわざとらしいくらいに背筋を伸ばすと、すました顔を見せた。
「じゅ、17だよ。立派な大人だ。そういうあんたはどうなんだ」
問い返され、今度はキトがぐっと詰まる。
「お、オレも17歳、だ」
とっさに嘘をついた。4年分、早く生まれたことにしておいた。
そうしないと、なんだか負けるような気がした。
「へ、へぇ、あんたも17か」
「ふ、ふん、偶然だな」
お互い不自然なくらいに背筋を伸ばし、
相手より少しでも自分を大きく見せようとしていることに
――自分の嘘を見抜かれないようにしていることに、2人は気付いていなかった。
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