「冒険者に捧ぐ100の言葉」の更新と、気ままに描いたラクガキの掲載。
2007.09.01 Sat
大邑<タイユウ>の町のいたるところでは、赤い旗が風にたなびいている。
赤旗の中央に描かれているのは、黒い胴体に、鋭い尻尾。
砂漠における影の暗殺者とも言うべき生き物を模した旗は、
まさしく、その町で最強を誇る集団を表すにふさわしい象徴だった。
武装集団“黒蠍(くろさそり)”――。
恐ろしく統制されたその組織は、
大邑の町の全てを取り仕切っていた。
権力も、金やモノの流れも、人の心も、全て。
それは、正式な統治者の存在しないこの町にとっては、
むしろ好都合なことであった。
武装集団とは言っても、“黒蠍”は決して、人民を虐げたりはしない。
町の秩序を保つため、また、外敵から町を守るため、
時にはその尾を振りかざすこともあるというだけだ。
夜空に蠍が昇る季節が巡ってくると、
人々は皆、窓辺に供物を置いて祈りを捧げた。
この町が、ずっと安泰であるようにと。
彼ら“黒蠍”が、自分達をずっと守ってくれるようにと。
その祈りの行方は、果たして神なのか、それとも蠍の尾なのか。
人々は、それすらも分からずにただ祈りを捧げた。
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